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ターミナルケア

三週間以上入れ続ければ 口からの人工呼吸器が限界に近くなり
母の肺の病気の治療のためには 気管切開の人工呼吸器が必要だといわれていた
しかし 肺の病気はおそらく末期的な状態にあり すでに改善の可能性が少なくなった
入院当初より ずっと延命治療をしないでほしいと家族の考えを
主治医の先生やICUの看護婦さんに伝えていた
先生方は少しの可能性でもあれば切開してでも次の治療を勧めてくれた
でも大量のステロイド投与 新薬への挑戦 あらゆることをしても病状は改善しない

管を口にくわえたまま二週間以上麻酔によって寝続けた母が
切開までして呼吸器をつける意味があるのだろうか
目覚めたときに首に穴が開いていると知った時
声が出ないとわかった時 どう思うだろう
80を超えた人が二週間寝続ければ筋力などの衰えは激しいだろう
呼吸器の必要な肺でリハビリなどできるものではない
苦しい呼吸と動けない体を母はどう思うだろうか
実際 投与され続けた弛緩剤や麻酔で 脳の状態も心配だった

生きているとはどういうことだろう
母の生き方は何をよしとするだろう
でも 眠っている母に確かめもせず 母の行く道を私たちが選択していいのだろうか
それ以前に 私たちが何か決めてしまっていいのだろうか
いろいろな考えを 堂々巡りで 姉やつれあいや子供たちと何度話しただろう
先生に今後の見込み 今までの症例 また母個人の状態の予測
どれほど一緒に考えてもらっただろう

もう すべてお任せしよう 切開して動けない体になって永らえても
そういうすべてをひっくるめて 母を見守っていこうと決断し
先生との話し合いに臨んだ日 意外にも先生の口から
切開のほかに 人工呼吸器をはずすという選択肢もあると提示された
それは 治療の限界を意味するものでもあったのだろう
あれほどまで切開にこだわっていた先生がたの本意は確かめはしなかったけれど・・
切開すれば長期化は免れない 酸素マスクに切り替えれば生命へのリスクが高くなる
そのような説明を受けて また一晩考えた末
私と姉は 呼吸器をはずし酸素マスクに切り替えることをお願いした

母の自発呼吸のできる範囲で 母の命を全うしていくこと
そのことが母や私たちにとって大事なことのような気がした
週の半ばに 母の口から管が抜かれて 母は3週間ぶりに自分で呼吸を始めた
その日にあわせて 意識レベルも戻された
初日は なかなか呼吸のタイミングをつかめなくて苦しそうだった
あの状態が続いたら 私と姉は きっと酸素マスクへの切り替えを後悔しただろう
でも 少しずつ慣れてきて 圧力のかかる酸素マスクでなくても
どうにか自力呼吸ができるようになった(かなり呼吸数は多いけれど)
大量の麻酔や弛緩剤が残っているためか 加齢による衰えの速さか
まぶたを上げる力もないほどの状態だが 意識が少しはっきりの時には
私たちの呼びかけにうなずいたりできるようになった

やっと母に会えた・・・
まぶたを上げてあげた時 母とアイコンタクトできたとき 母が大きくうなずいてくれた 
大好きな孫たちの呼びかけに何度もうなずいた
私たちは 母が喜んでくれたと実感できた

夜中や先生の判断でそのほうが良いという時には沈静をかけてくださるのが
私たち家族の何よりもの救いだ
苦しみを取り除いていただくこと それが最高の今の母への治療だ

口から人工呼吸のまま 意識を人工的に落とし続けるか
切開して呼吸器をつけながら 病気と闘い続けるか
感染症や臓器不全のリスクは高いかもしれない
でも 私は先生方がぎりぎりのところで出してくださった道が
やはり 母にとっては一番良かったように今思える

おそらく母は呼吸が苦しいと思う
通常の3倍の呼吸数でやっと生をつないでいる
10回でもいいから 母に呼吸を分けてあげたいと思う
母の苦しみを少しでも取り除いてあげたいと思う


ICUの看護婦さんたちは ほんとうにすばらしい方々ばかりで
私たち患者家族と先生  母と私たち いろんなパイプ役となって尽力してくださる
それが本当に 無力な私たちの何よりの救いとなっている

容態を見計らって個室に移してもらえたら しばらくは母の隣にずっといようと思う

人智を超えたところに母の命はある
自然の摂理に従って 人は生きて死んでいく
今はそのことにしたがって行くのが最善の方法だと思いたい

by runjiro | 2007-03-02 23:44 | 日々思うこと  

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